Martin D-28は、1931年に誕生した、アコースティックギターを象徴するドレッドノート・モデルです。
ドレッドノート・サイズ自体は1916年に誕生しましたが、D-28の登場によって「迫力ある低音」「豊かな倍音」「広がりのある響き」が確立され、以降のアコースティックギターのスタンダードとなりました。
その後、D-28はカントリー、ブルーグラス、フォーク、ロックなど、ジャンルを超えて数多くのミュージシャンに選ばれました。特に1960〜70年代のフォーク/ロックシーンでは、多くのアーティストがステージやレコーディングで使用し、D-28の存在感は「名曲の背後に必ずあるサウンド」として定着しました。
つまり、D-28は単なる一本のギターではなく、「音楽の歴史とともに歩んできた存在」であり「アコースティックギターの基準」であり、他のモデルを語る上で必ず参照される存在なのです。
仕様概要
D-28の魅力は、そのサウンドだけでなく、伝統を感じさせる外観と仕様にも表れています。
- トップ材:スプルース
- サイド&バック材:インディアンローズウッド
スプルースとローズウッドの伝統的な組み合わせ。深みのある低音と広がりのある倍音を生み出し、D-28ならではの「包み込むような響き」を実現。 - ブレーシング:フォワードシフテッドXブレーシング(GEスキャロップド)
音の立ち上がりが速く、豊かな鳴りを引き出す要の構造。低音域の豊かさが魅力。 - ネック材:セレクトハードウッド
強度と安定性に優れた木材。 - 指板・ブリッジ材:エボニー
硬質で耐久性があり、音の立ち上がりをクリアに表現。
細部の装飾やフィニッシュは控えめながらもクラシックな気品が漂い、まさに「シンプルだからこそ美しい」デザインです。
モダン・リニューアルの流れ ─ 2017年と2025年の進化
長い歴史を持つD-28は、その時代ごとに改良が加えられてきました。近年で特に大きな節目となったのが2017年と2025年のリニューアルです。
2017年仕様変更 ─ ヴィンテージ回帰とモダンプレイヤー対応
2017年のリニューアルでは、従来のクラシックなD-28をベースに、ヴィンテージ・モデルの要素を取り入れつつ、現代の演奏性を向上させる仕様へと進化しました。
- トップが焼けた雰囲気を表現するエイジドトナー・トップ
- オープンギア・チューナーによるクラシックな外観
- アンティークホワイトのバインディング
- フォワードシフテッド・スキャロップドXブレーシングによる広がりある響き
これらの変更により、「往年の雰囲気を持ちながらも、現代のステージでも扱いやすいD-28」へと生まれ変わりました。




2025年仕様変更 ─ 細部の深化とさらなる演奏性向上
そして2025年、D-28は再び進化を遂げます。今回は大幅な外観変更ではなく、プレイヤビリティとサウンドを徹底的に磨き上げる方向での改良が中心です。
- GEトップブレーシングを採用し、音の立ち上がりと倍音の豊かさを強化
- GE Modified Low Ovalネックで握りやすさと安定感を両立
- コンフォートエッジ加工によるスムーズなフィンガリング
- モダンベリーブリッジ&ボーンブリッジピンでサステインと高級感を強化
- ロングダイヤモンドネックトランジション/ヴィンテージヒールでデザインに時代を超越したエレガンスとプレイアビリティの向上
- ナット角度の最適化によりヴィンテージ風の美学を提供すると同時に、弦のアライメントと音色伝達を強化
まとめ ─ D-28が示すスタンダード
Martin D-28は、誕生から90年以上にわたってアコースティックギターの“王道”として愛され続けてきました。
2025年仕様変更により、その伝統はさらに磨かれ、現代プレイヤーに求められる演奏性とサウンドを兼ね備えています。
「アコースティックギターの基準」と言われる一本を探すなら、D-28は間違いなく最も信頼できる選択肢です。





