2020年10月某日、南部鉄器エフェクターで話題の kgr harmony 代表兼ビルダー福嶋圭次郎氏にご来店頂きミーティング。クロサワ楽器お茶の水駅前店エフェクター担当長尾の「あったらいいな」を形にするという、単純ながら無茶な依頼(=わがまま)から始まった計画です。

このページ内で使用している画像は、開発段階の試作機を撮影したものです。実際に販売される予定の製品版とは外観・内部の使用部品共に異なります。まだ担当者にも分かりません。予めご了承ください。

ひとつはディスクリート(オペアンプICを使わない)のオーバードライブ。

IBANEZ の TS や BOSS の OD、KLON などトラディショナルな名オーバードライブは JRC4558D などの IC を利用し歪みを作り出しますが、これを使わずに作ったらどんなオーバードライブになるのだろうという好奇心がきっかけのモデルです。

一般に、艶ありの JRC4558D などのヴィンテージのオペアンプは音が良いと言われますが、それは何故なのか。弊社ヴィンテージシンセサイザーの修理エンジニア曰く「ヴィンテージと現行のオペアンプを比較すると、古いモノの方が IC 内部の配線が太い為、同じ型番のオペアンプでも新旧で出音に違いが出る」とのこと。では、オペアンプを使わずに再現した場合、基板上のパターンの方がオペアンプ内部の配線より何倍も大きいので、何かしらの効能があるのではないか。
そんな好奇心・探求心が根底にあるオーバードライブです。

OD model
1st プロトタイプ改良1回目
試作コメント

ビルダーズボイス(kgr harmony 代表 福嶋圭次郎氏)
ややノイジーであることと、スッキリとしすぎたため、ノイズを抑えつつ、ミッドの「もっちり感」を得られるように変化させました。
大部分としては回路構成を変更しました。元の回路は主にふたつの増幅段での構成ですが、初段は歪みを作り、後段はレベルを調整するものでした。トーンはその間にフィルターを入れ調整できるようにしていましたが、変更後は、後段の増幅分でトーン調整を行うような回路構成で、いわゆる TS 系の回路をディスクリートにしたような回路です。
やはり聞き馴染みのある TS 系の音色になりますが、そのままだとレベルが小さく、ブースターとしては範囲の狭い設定しかできないので、後段の増幅段でレベルをアップさせつつトーンを調整できる増幅段としました。
また、ディスクリートのオペアンプを構成するトランジスタを変更し、ノイズやミッドの量感を調整しました。

担当者インプレッション(クロサワ楽器お茶の水駅前店 長尾)
初版と打って変わって、TS 味を感じるミッドが豊富になり扱いやすくなりました。気になったノイズも普通に鳴らす分には分からないレベルに。軽快なヌケ感と必要十分なミッドのもっちり感で汎用性が感じられるサウンドです。
その反面、凡庸とも捉えられ、もう一歩個性やアイデンティティが欲しくなりました。JC-120 に繋いだ際は気づかなかったのですが、Fender Deluxe Reverb などのチューブのコンボアンプに繋ぐと、元々のガラストーンが増えたミッドと共に鳴っているので、この点をより際立たせると面白くなりそうです。

OD model
1st プロトタイプ
試作コメント

ビルダーズボイス(kgr harmony 代表 福嶋圭次郎氏)
ディスクリート(パッケージングされたオペアンプ IC を使わずに、トランジスタで構成されるオペアンプの呼び方)で構成しているこの OD 回路は、オペアンプを使用して作る OD よりローミッドが太いというか、弦の質感が細くならず歪みを作り出します。1st プロトは、キレの良いガラストーンをイメージした歪みにしました。

担当者インプレッション(クロサワ楽器お茶の水駅前店 長尾)
早い。とにかく早い。最初のオファーから最初の試作が上がるまで1ヶ月未満…。福嶋さんの仕事スピードと同じぐらい入力信号への反応が早く、機敏なサウンドイメージ。周波数特性はかなり上(高音域)にあり、現代的なガラストーンを楽しめる。反応の良さとガラストーンが相まって、機敏でキレッキレな挙動ですが、反面、かなりピーキーで扱い切るのが難しい面も。また中域が寂しく、ノイズも少し気になります。

もうひとつは、しっかりとしたディストーションからドライブを絞ってクランチペダルとしても成立する、シングル回路オペアンプのドライブエフェクター。

多くのオペアンプを利用したディストーションペダルは、歪みツマミが12時以上ではご機嫌なサウンドを鳴らしてくれますが、12時未満、歪みの弱い設定にすると“ペケペケ”な頼りないサウンドになりがちです。歪みの強い時の倍音感やキレはそのままに、オーバードライブ的なローゲインまで可変できればきっと面白いモノになる。そんなコンセプトの機種です。

昨今、MOSFET などを多用しアンプライクな歪みを鳴らすペダルも多いですが、クランチサウンドや、いわゆるディストーションな感じの歪みサウンドは、トラディショナルなエフェクターを使わないと出せないと思っています。アンプだけでは作れない、エフェクター特有の歪みを、クランチ・オーバードライブからディストーションまで実現することを目指したドライブペダルです。

DS model
1st プロトタイプ改良1回目
試作コメント

ビルダーズボイス(kgr harmony 代表 福嶋圭次郎氏)
先ず低域のスポイルに関して、回路のインプット、また、回路図の中間どころのカップリングコンデンサ(回路を繋ぐためのコンデンサ、以下、CC)の値を増やし、各フィルターのカットオフ周波数を下げ、より低域を再生できるようにしました。ただ、回路のインプットの CC は低域だけでなく歪みのレンジにも変化を及ぼすため、歪みを上げた時の低域分の歪みの質感がバーストしないように調整をしました。
次に歪みの濁りに関して、歪みの濁りは倍音の統制や、トーンをミッドに寄せすぎないという点で改善を試みました。具体的には、ビンテージタイプのオペアンプから、モダンなオペアンプにすることで、ミッド寄りな歪みの質感(これはこれでロックで良いのですが笑)から、フラットでぶつかりの少ない歪みにしました。

担当者インプレッション(クロサワ楽器お茶の水駅前店 長尾)
あれ?これもう完成でいいんじゃない?と思わされるクオリティの高さ。懸案に上げた低域も、いい塩梅で確かに有る存在感が心地良い。わざとらしくブーストするわけでもなく、出しすぎてブーミーになるわけでもなく、入力信号に本来居る低域がそのまま鳴っている感じ。歪みの濁りも減り、どの歪量でも音像がハッキリ聴こえる。1回の改良でここまで良くなるのなら、もっと無茶を言えば更に凄いのができるのでは…。
低域も確かに鳴って、歪みの濁りも減ったけど、歪みの倍音に引っ張られるのか低域の輪郭がぼやける。曖昧で感覚的な表現だが、もっと洗練ができそう。

DS model
1st プロトタイプ
試作コメント

ビルダーズボイス(kgr harmony 代表 福嶋圭次郎氏)
ゲインを下げたときの自然でグラッシーな歪みから濃密なディストーションまで、ドライブの可変でキャラクターを変化させる音色を理想とし作り始めました。やはりゲインを下げた時に腰砕けにならない音圧を保ち、ピッキングに小気味よく反応をさせることが課題でした。現状、RAT に近い回路になっていますが、アクは強くなく、ワイドレンジな歪みです。

担当者インプレッション(クロサワ楽器お茶の水駅前店 長尾)
イメージどおりの歪量の可変にビックリ。本モデルの骨子が決まった感じ。歪みを抑えた際は小気味いい倍音のクランチサウンドで、カッティングが映えるサウンド。ドライブを上げるとバリッジリッとした噛み付くようなアグレッシブなディストーションサウンド。低歪の時とのギャップもあってかなりご機嫌なサウンドに感じられる。しっかりディストーションしているのに、入力への応答、追従性が高い点が新感覚。
ファーストインプレッションとしては凄く満足のいく内容ですが、それが故、些細な点が気になるのも事実。クリスピーな OD からバイト感のある DIST まで出力できるからこそ倍音成分の濁り・雑味が目立ち、冴えきらないニュアンスがある。また、低域のスポイル感が強く、軽快だけど軽薄で安心感・安定感に欠ける。

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