3月の終わり、パリの街にも春の訪れを感じる陽気の中、当店スタッフ宗形がフランスの銘工ドミニク・フィールド、ダニエル・フレドリッシュの工房を訪ねてまいりました。貴重な体験を皆様にも写真を交えながらご紹介したいと思います。

 当日は少し曇り空でありながら、街を歩けば少し汗ばむような気候。パリ中心部のやや北部、サンクレール寺院の近くに工房を構えているドミニク・フィールドの工房を訪ねました。

 ドミニク・フィールドはフランスを代表する製作家の一人。ウェイティングリストも膨大な数で、その人気の高さをうかがい知る事ができます。彼の製作した楽器はS.テナント、ミクルカ、A.ホルツマン、ビセンテ・アミーゴなど演奏家に愛されております。今回はいろいろなお話を聞くことが出来ましたので紹介させていただきます。

 フィールドは1977年よりギター製作を初め、1984年に製作家として本格的に製作を始めました。ハウザー、ブーシェの影響を多大に受けており、また力木の構造はラコートも参考にしているようです。彼にとってラコートはとてもインテリジェンスな楽器だということです。

 現在年間10本は絶対に作りません。最小数量を製作することでクオリティーを維持することに努めているそうです。

 音を決めるポイントを訊ねたところ「全部!」と即答(笑)で返ってきましたが、多くの製作家よりも裏板を重要視していると答えてくれました。「表面板を60%とすると裏板は40%程度かな。」いろいろ試行錯誤した結果、現在はハカランダを使用した3ピースの裏板が最高に良い楽器を産んでいるそうです。


奥様愛用の楽器

表面板にはスイス北部の厳選されたスプルースを使用。ジャーマンスプルースよりもずっと気に入っているそうです。奥様はヨーロッパを中心に活躍中のギリシャ系のギタリスト、カトリーヌ・リオリオス(Catherine Liolios)。もちろんフィールド作のギターを使用。近々C.テデスコ作「プラテーロと私」をリリース予定。

早速奥様使用中の2000年作を弾かせて頂きました。ルックス同様とても洗練された音色が印象的。よく伸び艶やかな高音、粘りとコシのある低音。非常にすがすがしく爽やかな気持ちにさせてくれる楽器でした。製作途中の楽器が1本壁にかかっていましたが、出来上がりが本当に楽しみです。






とても気さくなフィールドはバッハのBWV999プレリュードを演奏してくれました。パリのコンセルバトワールでも学んでいた腕前はさすがのものです。

 好きな演奏家を訊ねると「セゴビア、ブリーム、J.ウィリアムズ、バルエコ、エドアルド・イサーク…あ、もちろんリオリオスも大好きだよ!」との答え。モダンの演奏家の多くを好んで聴くそうです。

最後に一緒に写真を撮りました。

フィールドさん、お忙しい中本当にありがとうございました。またお会いしましょう。


左がフィールド、右が筆者

タンポ塗り作業中(動画はこちら)




テーブルクロスの上に
ネック構造書きまくり!

 この日のお昼は当店一押しの製作家ジャン・マリー・フィヨールとランチ。「街のレストラン」といった素朴ながらおしゃれな雰囲気のビストロ。なごやかに食事をいただいていたものの、いつしか話題はギターの話しへ…。いつでも新しい可能性を追求する研究熱心な彼との話しはネック構造の話しで最高の盛り上がりを見せました。

 フレドリッシュの工房はパリの中心部から少し南西に向かったやや静かな住宅街の中に構えています。

 銘工ダニエル・フレドリッシュは今年75歳になる巨匠。世界中の有名演奏家に愛されている楽器を今も作り続けております。物腰が柔らかく暖かい人柄の方で、初めは緊張していた私もすぐにリラックスできました。

 生前親交の深かったロベール・ブーシェとのいろいろな思い出をアルバム開いて懐かしそうにお話してくれました。興味深かったものは製作するたびに作っていたノートを拝見させて頂いた事。1本1本の緻密な構造図、各演奏家からの要望などが事細かに記されており、フレドリッシュも時に目を通し懐かしむようでした。また大事に保管されているたくさんの手紙も見せてくれました。製作を依頼した演奏家はブリーム、バルエコ、フェルナンデス、アウセル、ピエッリなどまさにビッグネームのオンパレードでした。中にはフレドリッシュが材料を提供したガブリエル・フレタのものもありました。彼が世界中の演奏家に愛されている事を実感することができた瞬間でした。午後の作業があるとのことで名残惜しくもお別れの時間。

 フレドリッシュさん、お忙しい中本当にありがとうございました。いつまでもお元気で素晴らしい楽器を作り続けて下さい。


工房内にはたくさんの演奏家の写真が


ブーシェの絵



製作中のフレドリッシュ


左から筆者、フレドリッシュ、ジャン・マリー・フィヨール