2006 MTD434 #1456 "50th Anniversary of T.KUROSAWA & CO.,LTD"
上記の古いトバイアスのアウトラインを基に新規に製作されたこの楽器は、ボディ・バランス等の美点の全てを受け継いでいる。そして、 #0190に限らず、後のトバイアス・ベース全体についての総括も含むモデルになったという事ができよう。何故なら、多層ラミネート構造による「トバイアス・コンセプト」の楽器を製作する事自体、彼にとって本当に久しぶりであった筈で、当時への想いを随所に感じる材選び、となっていたからである。そして単なるレプリカでなく「MTD」になってからの長所もふんだんに盛込まれている。こうした部分に、この楽器がいかに特別なものであるかを意識させる。以前マイクにトバイアスの製品コンセプトについて訊いた事があったが、'80年代は、やはりシンセサイザーによるベースや音楽の全体の印象から、固い、言わばデジタル的な音色のニーズが高く、そうした楽器を作ることが多かったそうだ。近年のMTDでは殆ど使われなく、当時のトバイアスで多用されていたパープルハート材をボディ・コアにしたり、アクセントに用いたりといったあたりは、トバイアスらしさの為であろう。楽器は若干の重量増となったが、明瞭な輪郭を得ている。そして音があまり固くなりすぎないように、当時のようなグロスのフィニッシュを避け、サテンフィニッシュとしている。楽器にオーガニックな魅力を加えた事で、近年のMTDらしさも盛込んでいるわけだ。メイプル/ブビンガのスルーネック構造、スタビリティと素材の持つナチュラルさを失わないギリギリのバランス感覚。指板がエボニーでなく、ローズウッドなところも大きいように思う。おそらくエボニーだと、もっとコンプレスされた'80年代懐古的な印象の楽器になってしまったかもしれない。ボディ・トップやバックが美しい事はいうまでもない。
こうした絶妙のバランスで形成された木部のアコースティックで美しいトーンを何の色づけもする事なく、そのまま転送する最新のMTDのピックアップ及びエレクトロニクス。"リバースP"といったコイル・レイアウトにになっている特注のピックアップは、リア・ピックアップの1、2弦用コイル位置が、'60年代JB同じ位置になるように配置されている。その他のコイルはJBより若干ブリッジよりにマウントされている。こうしたピックアップ位置もMTDベースのノウハウが活きている部分である。弦の振動を確実に拾い、ハムが乗る事なく、いち早くロー・インピーダンス化し、なるべく劣化する事なく転送する。こうする事で楽器のアコースティックな「ニュアンス」が失われずに転送が可能になるのである。日本では一般に不自然にブーストされた高音を「アクティブっぽい」と嫌う傾向が強い。MTDの音色は高域が非常に良く出ている。しかし、この高域は楽器にもとから「あった」もので、この高域に楽器のアコースティックなニュアンスがたくさん含まれている。全く不自然なところはなく、むしろとても有機的なのだ。





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