InterviewZON開発者インタビュー:ベースマガジン誌 200410月号掲載記事の完全版)
●コンポジット・ネックを採用した理由はどういったものでしたか?

それについてお答えするには、まず経緯をお話ししなければなりません。ベース・プレイヤーだった私は、1980年に、ニューヨーク州でギター製作と修理全般を取り扱うショップを立ち上げました。そこで大量の修理を経験し、私はギターの設計、製作をする上で何を避けなければならないかを学んだのです。プレイヤーでもリペアーマンでもあった私は、自分の理論を自身でテストし、実用レベルのアイディアを展開していきました。そういう意味では、私はとても良いポジションにいたと言えます。
そして、持ち込まれた修理品の大半は、ネックにトラブルを抱えていました。中には季節が変わるたびに、持ち込まれるようなものもあったほどです。私は、ネック調整とセットアップに追われる日々を過ごさねばなりませんでした。絶え間なく続く不安定なネックとの格闘が、私により強靭なネックと、それを用いた、より良いベースを開発することを決意させたのです。
そしてそれを実現させるべく、学生の頃興味を持ち、研究したことのあるコンポジット素材を、楽器製作に活かせないか、と思いついたのです。
最初は、グラファイトを扱っている業者から様々な素材を手に入れ、実験するところから始まりました。ほどなくグラスファイバー製のボートのパーツを製作している店の店主と知り合いになりました。彼は、快くプロトタイプの製作ために彼の施設を使わせてくれました。
しばらくして、我々はモデュラス・グラファイト社がグラファイト・ネックの特許を持っているということを知りました。そして彼らが私たちのサプライヤーになりました。モデュラス社は、私が作ったマスターの型から基本となるネック・シェルを作り、その後、私たちは自分の店で、グラファイト部を作りネックを完成させていました。そのような提携関係はその後5年間続きましたが、その後、私たちは彼らの特許を侵害しないような、違う製法を採用し始めました。これついてはこれ以上は企業秘密のためお話できません。ご了承ください。以上がコンポジットネック採用の理由と経緯です。

●フェノウッド指板というのも特徴的ですが、これによってどのような効果が得られるのですか?

これはもともと私のオリジナルのアイディアではなく、同じ形式が「pakkawood」という名称で50年代、Gretsch社で2、3年の間、採用されていたようです。
フェノウッド指板とは、多層ラミネートされたハードウッド、一般的にはメイプルかバーチ材を使います。それらを黒く染色し、熱硬化性樹脂をしみ込ませます。それから高熱と圧力を加え、圧縮するのです。その結果、指板は非常に固く、耐久性に富んだ、湿度変化に強い物質となります。
伸縮率がきわめて小さいので、コンポジット・ネック・シェルにあわせて使うには、非常に適していると言えます。
フェノウッド指板の効果の一つは、どんな木材の指板よりも安定感が高い点でしょう。なおかつ見た目や弾き心地やサウンドは木のそれと変わりません。また、私たちのフェノウッド指板は他の木の指板と同様リフレットも可能です。

●フェノール指板とは何が違うのですか?

違います。フェノール指板は、私たちも何年も前に採用していました。フェノウッドと同様に圧縮されているのですが、素材が紙のラミネートなのです。また、より多くの樹脂を含ませることが必要なことと、元々が紙ですから、素材自体、固有の強さを持っていません。
完成したフェノールの指板の音色は、暖かく素直なフェノウッド指板と比べて、非常にブライトでスナッピーです。


●例えば、コンポジット・ネックと木のボディといった異なった素材を組み合わせることによって、どのようなサウンドが得られるのでしょうか?

はじめにお断りしておきたいのですが、私たちのコンポジット・ネックはとても「フラットな」レスポンスを持っています。したがって、それはボディ材そのものが持っている固有のトーンに対して、何らかの色づけをするようなものではありません。
私たちはいろいろな木材を使用しています。ボディ材としては、スワンプアッシュやマホガニー、ソフトメイプル、アルダーなどです。これらの木の各々のもつユニークな特徴が、楽器ごとに反映していると言えます。また、ブックマッチされたトップ材を加える事で、トーンの組み合わせに微調整をする事も可能です。


●ピックアップにはZON用にカスタムされたバルトリーニを採用していますが、どのあたりが市販品と違うのでしょうか?その特徴について教えて下さい。

市販品のピックアップとは、元々のピックアップのひどい音質を改善する目的で作られていますから、どんな木材のどんな楽器に取り付けても破綻がないようにデザインされています。
こうした「どんな楽器にでも合う」というコンセプトは、「その楽器の最適なトーン」という私たちの理念に合いません。市販品のピックアップを仮に取り付けたとしても、もちろん悪い音ではないでしょうが、それが、私たちの楽器の個性をを100%引き出しているとは言えないでしょう。私たちのピックアップは全て、モデルごとのキャラクターに合わせてカスタムワウンドされた特注品なのです。
新型を開発する際には、その楽器で実現したい基本的なトーンを見極めるため、いくつかのピックアップを「オーディション」する事からはじめます。そして本当に欲しいトーンの組み合わせが見つかるまで、たとえ何ヶ月かかろうと、さまざまな組み合わせを試し続けるのです。この作業はある意味退屈なのですが、楽器をデザインする上ではきわめて重要なプロセスと考えていますので、決して手を抜いたりしません。私たちのものは、このようにして最終的に選ばれたピックアップですから、そのモデルごとに最適化されたものと断言できる訳です。


●LegacyシリーズとSonusシリーズの開発コンセプトの違いをそれぞれ教えて下さい。

Legacyは私がデザインした2番目のベースです。最初のものはもっと複雑なボディ形状をしていました。Legacyはそのボディをもう少しシンプルにしたものです。そしてほんの僅かな改良加えましたが基本的なデザインは現在に至るまで殆ど変更点がありません。
背景にあるコンセプトは「調整の必要のないネックと造りの良い、ハイクォリティな楽器」です。強烈に印象的な見た目と、すばらしいサウンド、手にしっくりと馴染む弾き心地を追求しました。
Sonusについても基本的な理念はLegacyから受け継いだものですが、この楽器には「'90年代のジャズベース」という明瞭な狙いがありました。
それまでもたくさんのジャズベ好きなプレイヤーと一緒に仕事をしてきたのですが、彼らの多くがツアーで、そのジャズベースがダメージを受ける事を恐れていました。また日々の調整も頭痛の種でした。
彼らの言葉に私は奮起しました。そしてトラディッショナルなボディラインをデザインし、ジャズベースと同様ボルトオンネックを採用し、'64年製JBのヴォイスを模したピックアップをバルトリーニとともにデザインし、古いフェンダー「デュアル・ショーマン」アンプの特性を再現したプリアンプを採用しました。
Legacyが新しい方向性を打ち出したのに対し、Sonusはヴィンテージ・トーンを獲得する事に成功したと言えます。


●LegacyシリーズとSonusシリーズはそれぞれピックアップのマウント位置が異なるモデルがありますが、ピックアップのマウント位置とサウンドの関係はどうお考えですか?

ベストなピックアップの位置と楽器の音の関係は、音響的に何を求めているかによって変わってきます。ピックアップをネックの方へ近づけていくほどに、音色はより低音成分が増します。ブリッジの方へ近づけていくほどに、音色はより高音成分が増します。弦ごとに、ハーモニックスが強調されるポイントとキャンセルされてしまうポイントがあります。正しいピックアップ配置の秘訣は、全体的な音がバランスをとりつつ、位相がキャンセルされないようなポイントを見極める事です。私たちはそれぞれのモデルのコンセプトに合わせて、ピックアップの位置の最適化を行っています。


●ZONの持つブランドの理念、そしてこれからの展望について教えて下さい。

私たちの役割は、常に最高の演奏をこころがけるプレイヤーたちへ、ツアーやスタジオ、自宅他、世界中のあらゆる場所でも、その高性能ぶりを保つことの出来る楽器を提供することにあります。
そして、最高の材と、クラフトマンシップあふれるハイクォリティで最も革新的な私たちのベースは、仕事に誇りと情熱を持ち、1本1本を、まるで自分の楽器のように扱う、そんな数人の熟練工の手により生み出されます。また、日々より高い完成度を目指して、細かな配慮を怠らないようこころがけています。

ZONのベースは、様々な素材と部品から成ります。そして、私たちには、例えば、木材や塗装の方法、ハードウエア等々といった、どのような要素も相互に影響があるように感じますので、豊かで音楽的な楽器をクリエイトするために、それらが相互に作用するよう融合させるのです。そしてその作業そのものも、互いを補えるよう、皆による共同で進行しています。

部品は、適当なパーツ・カタログの一覧から発注する、といったやり方ではなく、むしろ、造る楽器の個性に合わせて、私たちで特注した部品を注意深く組み合わせるようなやり方をとっています。そうすることで、ベースはバランスの取れたその楽器特有のトーンを得ることができます。ありふれたパーツの組み合わせでつくられた楽器に、サウンドやプレイスタイルを順応させるより、理想的な音質で特別につくられたいろいろな楽器の中から自分にぴったり合うものを選べるほうがいいと考えているからです。

あなた自身のサウンドというものは、まずは楽器本体から始まっている訳ですから、このことは当然それ以降に大きな影響を及ぼします。もしあなたの楽器の音質に問題があれば、どんなベストなアンプを使っても良い音は得られないのです。明言させていただきますが、ZONの製品は生涯の友となるようデザインされています。そしていつでもあなたの演奏能力とともに成長していきます。まるでクラフトマンにとっての良い工具がそうであるように、ZONベースは、あなたの演奏レベルそのものの向上に役に立ってくれるでしょう。

私もベーシストですから、出来の良い楽器がいかに重要であるかを知っています。製作過程ですみずみまで何重にも行われる検品の後、いよいよ出荷を残すのみとなった段階で、全てのベースを、私自身で検品しなおすようにしています。なぜなら、これらのベースは私の名前を冠しており、私は自分たちの仕事を誇りに思うからです。自分自身が納得いかないものを出荷する訳には行きません。ZONの製品は、最も美しく、機能的で、素晴らしいサウンドを持ち、さらに弾きやすくなければならないと考えています。

今後のゾン社はエキサイトなものになります。新たなコンポジットネックモデルのベースを開発していくことだけでなく、エキサイティングなモデルの為のアイデアを提案したり、改善していく方法を模索してい続けます。
最近では、ウッドネックの楽器を紹介したりもしました。これはコンポジットネックを否定するように見えるかもしませんが、多くのプレイヤーがまだウッドネックを望んでます。これはウッドネックが以前より良くなる為の新しいチャレンジをして新たな方向性を見出しました。
今後数年でギターとアウトボードエレクトロ二クスの紹介で生産ラインの拡張を考えております。ベーシストやギタリストが、私たちに美しく、品質の高い、機能的で、革新的な楽器を製作する能力があることに気づくことになると思います。

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