どんなギターも正しい保管、正しい取り扱いをしなければ、故障などの原因になります。自分で行うべき管理を怠ったがために発生するトラブルが少なくありません。そのような場合には、たとえ保証期間内であっても修理は有料になります。そのような事故を防ぐためにも、ここに書かれていることを厳守し、常にギターをベストコンディションに保つように心がけてください。


ギターの湿度管理
 湿度の管理はあらゆる楽器にとって非常に大切な問題であり、湿度管理を正しくすることは、常に美しい音色を楽しむため、ひいては愛用のギターを故障させないために絶対に必要なことです。ギターが正しい状態にあれば、ギターに対する誤った考え、リペアの問題も発生しません。

 
この、ギターの湿度管理はマーティン社が示しているギターの湿度に対する指針です。

 湿度と湿気がギターに与える影響を充分に理解することはギタープレイヤーにとって非常に大切なことです。高品質のギターほどデリケートであり、マーティン社では、ギターを扱う全ての関係者に湿気を安全なレベルに維持するよう要求しています。ギターは湿気の異常な上昇や下落に非常に敏感であり、湿気の管理こそギターの管理の第一歩といってもよいと思います。
 多くのギター製造メーカーは湿気の管理について幅広い知識を持っており、最良の状態の中で製作され、出荷されます。ギタープレイヤーも、メーカーの湿気に対する基準を愛用のギターに応用すれば、理想の状態を保つことができると思います。

 湿気の管理はあらゆる種類のギターに必要なことです。湿度管理が正しければ、収縮したフィンガーボードからフレットが突き出ることもなくなるでしょう。ギターの湿度管理はプレイヤー自身が行なうべきことで、万一の故障でも、それが製造上の責任かプレイヤーの管理上の問題かは、専門家が見ればたちどころに理解できます。
 木材は年々貴重品になり、代替品はありません。ひとつひとつのギターは大切に扱わなければなりません。近年、注意不足や配慮不足などにより損傷を受けたギターを多く見るようになってきました。ギターのためにも、また木材資源の保存という観点からも湿度の管理に注意を払う必要があります。
 予算が許すなら、アコースティックギター専門の保管ルームを持つことが理想です。季節によっては除湿機・加湿器等を利用することもよいでしょう。

 空気は“水蒸気”の形で水分を保有しています。いかなる湿度においても空気は一定の水分を保有しています。部屋中の空気に可能な限りの水分を含んだ状態を相対湿度100%であると言います。言い換えれば、容量に対して100%の水分を含んでいます。
 部屋中に半分の量の水分を含んだ状態を相対湿度50%といいます。暖かい空気は冷たい空気より多くの水分を含んでいます。部屋の空気が暖かくなるにつれ、水分を多く含むようになるのです。しかし、単に部屋を暖めることで水分が増すのではなく保有許容量が増すのです。もしあなたが湿度を一定に維持したいのであれば、暖めるときは水分を増やし、冷やすときは水分を減らす必要があります。
室内の相対湿度を50%に維持していればギターがひび割れることはないでしょう。極端な湿度変化によってギターが割れるのです。それは単純なことです。
 相対湿度は図にして説明しますと簡単です。例えば8オンス容量のグラスに4オンスの水を入れるとします。水分保有容量は全体の半分で相対湿度50%の部屋と同じ状態になります。仮に4オンス容量のグラスに4オンスの水を注げば満杯になり相対湿度100%の部屋と同じ状態になります、。16オンス容量のグラスに4オンスの水を注げば4分の1が満たされ、相対湿度25%の部屋と同じ状態になるのです。相対湿度は以上でほぼ説明ができ、ただ湿度が違うときに、同じ大きさの部屋が大きなグラスや小さなグラスのようになるだけです。
 気温15.6度(60°F)、相対湿度100%の部屋は4オンス容量のグラスに水が満杯の状態とほぼ同じであり、気温21.1度(70°F)相対湿度50%の部屋は8オンス容量のグラスに水が半分入っている、そして気温26.7度(80°F)相対湿度25%の部屋は16オンス容量のグラスに水が4分の1満たされているのとそれぞれ同じ状態なのです。部屋が水分を増減させるのではなく、相対湿度が温度とともに変化するのです。
16オンス容量のグラスに4オンスの水を注いだ状態。気温26.7°C、相対湿度25%の部屋と同じ。
4オンス容量のグラスに4オンスの水を注いだ状態。気温15.6°C、相対湿度100%の部屋と同じ。 8オンス容量のグラスに4オンスの水を注いだ状態。気温21.1°C、相対湿度50%の部屋と同じ。
 全ての有機物や多孔性物質は、温度と湿度の両面から取り巻く空気を均一にしようとします。もしあなたが何かを乾燥した環境に置けば、それは乾燥するでしょう。木材も同様に取り巻く環境に同化します。環境が乾燥していれば、木材も乾燥してきます。逆に湿気があれば木材も湿ってくるのです。木材が水分を含めば膨張します。木材が水分を失えば逆に縮みます。これは木材の持つ物理的特徴です。家の中のドアが湿った時期には開くのが固いし、乾燥した時期には容易に開く、という現象は最も良い例でしょう。

 相対湿度50%が、ギターのような木製品の効果的な保存に最適であると考えられます。興味深いことに人間も湿度50%当たりが最も快適であるといいます。しかしながら地域によっては最適の湿度の範囲よりも高かったり低かったりします。例えばシアトルは平均的に湿度が高く、逆にフェニックスやコロラドは湿度が低い、ミネソタは湿度が夏に高く冬に低いのです。
 室内の空気は外から来ます。ヒーターやエアコンによって室内の温度を変えると同時に相対湿度も変わります。
この温度変化の良し悪しは室内の湿度を50%に維持できるかどうかで決まります。湿度は加湿器で高くできるし、除湿器で低くすることもできます。エアコンは、事実上大きな除湿機です。あなたは夏に外気が湿っていれば室内でエアコンを使用するでしょう。あなたはおそらく何も気にせずに夏になればずっと室内を除湿してきているのです。これは大変良いことです。地域によってはもっと除湿が必要であり、また乾燥剤や冷却剤等も除湿器として有効な手段になります。

 ギターに使用される木材は、製造工程の前に特別な乾燥が必要です。マーティン社では、窯で処理する前に、12%〜15%の湿気で木材を乾燥させておきます。窯でゆっくりと湿気を6〜8%迄下げます。次に工場へ運ばれ、工場内では注意深く環境が維持されます。そこで木材は製造時に8%という湿気に順化させられるのです。
 スプルースのサウンドボードは通常約8%の湿気でよく乾燥されて業者より届くため、前述の工程とは異なります。スプルースのようなトップウッドは一般的に非常に軽くまた柔らかいので、比較的短い期間で乾燥するのです。長年の経験から楽器製造メーカーは相対湿度に関して統一の結論に達しました。
マーティン社は工場内を気温22.2度、湿度50%に維持しています。このレベルをギターを置く室内で維持すれば、楽器はほぼ工場内と同様に安定した状態で保たれるでしょう。
 ギタープレイヤーがすべきことは何か? 簡単に考えると、損傷を防ぐことが湿度の管理にとって主要な目標のように思えます。しかし、損傷を受ける前にギターは幾段階もの変化を経ているのです。例えばギターが乾燥しすぎてひび割れが起こったとします。それは単にある時点でそのギターが完全な状態でなくなりひび割れが生じたことを意味するのです。現実に起こったことはギターが徐々に乾燥し、木材が縮み、張りがこれ以上緩まないまでトップが徐々にへこみ、最後にひびが入るのです。ひび割れまでの段階でトップがゆっくり落ち込み、それとともに弦も低く低くなるのです。ギターは極度の湿気にさらされると縮むかわりに膨張するという同様の変化をします。限界を超えると、継ぎ目が離れ、ブリッジがゆるみ、弦高が耐えられなくなる、等々。ポイントとしては、ギターは適度な湿度でなくなるとある程度兆候を示すものであり、そしてその兆候をしっかり把握できるようになれば一目で発見できるのです。
ギターにひび割れが生じないからといってそのギターが良い状態であるという意味ではありません
 多くのプレイヤーは室内が乾燥しているために、現実に危険といえる状態でギターを演奏しているのです。もしあなたが愛用のギターをトッププレイングの状態に置いておきたいならば、湿度を上手に管理することによって、実際にそれを維持することができるのです。

 湿度を計るためには湿度計が必要です。湿度計は値段に格差があり、一般的に安価な物は正確さに欠けることもあります。大きな室内には専門の湿度計測器がより適当でしょう。

 湿度が高すぎるのも有害になり得ます。典型的な兆候は、フレットや弦の変色(さび)、チューニングマシーンのニッケル、クローム、もしくは金メッキの腐食、トップや他の木材部分の膨張、高い弦高、添え木やブリッジのはがれなどです。
 室内のギターは全て良い状態です。
 フレットの縁が鋭く突き出てき始めます。フィンガーボードの部分がボディよりも拡張し12か14フレットからサウンドホールの間に小さなひびが生じることがあります。
 トップが縮み始めます。サウンドボードの表面に波紋ができたり、乾燥してきます。鋭く突き出たフレットがより顕著になります。ギターショップに運ばれたばかりの楽器は、ケースから出されていないので、その兆候が発見されないでしょう。それらのギターは1ヶ月以上在庫としてあるギターよりも見栄えもよくフィーリングも優れています。
 ギターにひび割れが出てきます。しかしひび割れが生じていなくてもかなりの湿気が失われ、トップも落ち込んできます。びびりをなくすため、サドルを高くする必要性がでてきます。
 より多くのギターがひび割れします。多くのフレットをやすりで削る必要性が出てきます。プレイヤーはしばしば販売店やリペアマンに問題が起きたと電話をしてくるようになります。

 ギターを保管する時や移動するときは、弦をゆるめ、必ず純正のハードケースに入れてください。またケースに入れてあっても、取り扱いには細心の注意を払い、腰をかけたり、大きなショックを与えることは避けてください。
 保管は、湿度が低く直射日光が当たらないところ、そして温度の変化が少ない所が最適です。除湿剤や除湿器を用いて、エアーコンディショニングされる場合には、過剰除湿されないようにご注意ください。
 車や飛行機、列車等で運搬するような場合には、トランクや荷物室は避け、座席などを利用しましょう。移動の際は出来る限り手元に置いてください。特に長時間、車の中に放置されますと、夏場などは極端な高温・高湿状態になり、ギターにとって最悪のコンディションになってしまいます。

 マーティンギターはほとんどが自然材です。したがって化学製品から発生する揮発ガスや薬剤には、充分注意を払ってください。とくにマーティンギターのボディやネックの表面は、サウンドへの影響を考慮し高級ラッカー(テクノロジーシリーズ以下はクロスリンク塗料)が薄く均一に塗られていますので、一層の配慮が必要です。ビニールなどの合成樹脂類、合成ゴム類などは要注意。ギタースタンドのゴムの部分、カポタストのゴムや化学繊維のフェルトなども、長時間接触していると塗装面を侵すことがありますのでご注意ください。また化学繊維の衣類にもご注意下さい。

ギターの湿度管理はプレイヤー自身が行うべきことで、管理不手際の故障は、1年間保証の期間内であっても有料となりますのでご注意下さい。また運搬時にギターに振動を与えることも避けてください。


ギターのコンディション
 マーティンギターに用いられている木材は、長時間にわたる自然乾燥や充分なシーズニングを施されていますので、大きな狂いは殆ど発生しません。しかし、高温多湿や極寒、過剰乾燥等の状況下では、時としてボディやネックなどに若干の変化を生ずることも考えられます。常にギターのコンディションに注意を払い、万が一変化が生じた場合には、お近くのマーティン取り扱い楽器店にご相談下さい。

 弦高は、プレイヤーの好みや張る弦の種類などによって、一概には「これくらいが最適」という基準を定めにくい問題です。一般に、弦高が高くなると音のパワーは増加しますが、弾きにくくなります。逆に弦高が低すぎた場合はにはパワーが低下し、ビリつきの原因ともなります。
 マーティンギターは出荷時に、
適正な弦高基準にしたがって調整しておきますが、お気に召さない場合は、楽器店経由にて、当サービスセンターにて弦高調整を承ります。(ユーザー実費負担)

 ギター各部を交換修理した場合には、元のサイズより、わずかに大きなものになる場合があります。

 マーティンギターには伝統的なスティールバー埋め込み式のスクエアロッドネックモデル(SQモデル)と、ボディ側で調整可能なアジャスタブルロッドネックモデル(AJモデル)の2タイプがあります。SQモデルはネック内の鉄心によって、ソリの調整は出来ません。昔ながらの製作方法であり、欠点ではありません。工作精度も完璧に近い状態を求められる為、加工にも多くの時間が費やされます。ネックの素材であるマホガニー材の選定には充分な配慮をもってのぞんでいますので、長時間に渡って安定したネックコンディションをお約束します。
 しかし、念のため演奏後は、弦がたるむぐらいまで弦のテンションを下げて、ネックに大きな負担がかからないようにしておけば安心です。通常の弦を張った状態での、若干の順反り傾向については、弦高が適正であれば全く問題はありません。万が一極度のネック反りが発生した場合には(SQモデル・AJモデル問わず)お早めにお近くのマーティンギター取り扱い楽器店にご相談ください。
くれぐれもご自分で調整されることは避けてください

 マーティンギターは最高級のラッカー塗装(テクノロジーシリーズ以下はクロスリンク塗装)で仕上げられています。良質の音をごく自然に発生させるため、ギターのボディに負担を与えないよう、塗装は伝統的な手法によって薄く均一に施されています。
 その為、塗膜と木材の
収縮率の違いから、時としてクラックと呼ばれる塗装面のヒビが発生することがあります。これは、高級塗装の楽器のみに見られる現象で、ギターそのものに対する悪影響はまったくありません。また、発生状況はそれぞれのギターごとに異なり、クラックが発生しない場合もあります。クラッキングは、いわばギターの個性とも言うべきものなのです。
 また、D45をはじめとするアバロンパールボディトリムを持つモデルは、木材とアバロンパールの収縮率の違いから、多少の隙間ができますが、
自然の素材を用いる以上やむを得ないことです。


メンテナンスとリペア
 このマニュアルでお伝えする各項目を守ってご使用いただければ、あなたのマーティンギターは充分な能力を発揮してくれるはずです。ただし、再三述べてきましたように、ギターの主要材は天然の「木」であることから、コンディションの変化が全くないとは言いきれません。したがいまして、なんらかの変調が感じられましたら、無理にご自分で直そうとせず、お早めにお近くのマーティンギター取り扱い楽器店にリペアをご依頼下さい。
 また良いコンディションであっても、長時間を経た場合には、一度、楽器店及び当サービスセンターにて、調整やチェック等のメンテナンスを受けられることをお薦めします。

 ギターの取り扱いや手入れは丁寧に越したことはありません。また演奏される上では常に正しいピッキングを心がけるようおすすめします。誤ったピッキングを続けていると、レスポンスやトーンのクォリティが低下し、充分な音が出せないギターになり兼ねません。正しい奏法でしっかり弾き込めば、それに充分応える能力を秘めたギターなのです。
 あなた自身の手でマーティンギターを本当の銘器に育ててください。

 充分演奏を楽しんだ後は必ず各部分の汚れを拭き取っておく習慣をつけてください。ペグや弦、ネックやボディなど、体が触れる所は特に入念に。常にギターを美しくしておくことがベストなコンディションを保つ秘訣です。
※ギターのお手入れには、
マーティン純正のクロスとポリッシュをご使用されるといいでしょう。



弦の交換
 どんなに質の良い弦であっても、安定した音を維持出来るのは、演奏時間に換算して、延べ24時間くらいと言われています。常にベストな音の常態で演奏するためには、できるだけ早めに弦を交換されることをお薦めします。
 また弦の交換は1本ずつ行うより、6本すべてを交換するほうが、音のバランスの面からもベターです。なお、特別な場合をのぞき、それぞれのギターに適した弦をお使いください。例えば、Dモデルにコンパウンドゲージを用いることや、000モデルにヘビーゲージを用いることは好ましい選択ではありません。

※ 弦を交換する際、切れた場合をのぞいて、弦は必ず緩めた状態で行ってください
※ どんなギターでも弾き方でビリつきが発生します
※ 弦のテンションによってビリつきが発生する場合があります


 以上のことを厳守していればギターに故障が発生することはほとんどありません。管理不手際の故障は、たとえ保証期間内でも有料となります。

 
また、こちらを読まれた上で疑問や質問などがありましたら、個別に応対いたしますのでinfo@kurosawagakki.comまでご連絡ください。マーチン専属のリペアマンが直にお答えいたします。


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